「旅の宿家」鳥取境港❝縁❞ ブログ(^^♪

とにかく「旅」が好きな自由人。
「旅そのものと境港・水木しげるロードを楽しむ」に拘った「旅の宿家」(ゲストハウス様式)を、2016年8月26日にオープンしました。
https://guesthouse-en.jimdo.com/
女性客とファミリー主体の”遊び心”いっぱいの寛ぎの空間です!
米子や大山、松江、美保関、隠岐などへの起点としても生かせる「妖怪と魚の町」を楽しんでください!

景観保全と町の魅力

間もなく水木しげるロードの大リニューアルが本格化する。
既に境港駅前の駐輪場が撤去された。妖怪のブロンズ像をテーマごとに再配置するため、一時的に移す場所となる。移設はゴールデンウィーク以降で、まずは植栽の整備から始まる予定だ。


1年半かけて、ハード面は美しく整備される。
町が美しくなることに異論はない。だが、課題は「つくりもの」になってしまわないか、だ。
市や県は水木しげるロードを一つの「テーマパーク」のように捉えているようで、某大学の偉い教授が考案した当初の計画案は、訪れる旅人が「何を楽しみにしているのか」を無視しているばかりでなく、住民の生活も全く見えていない、非現実的な空間をつくるだけのものだった。当然、反論が多発し、妥協点を探りつつ緩和されるも、反対意見が多かった一方通行は、市は頑として曲げなかった。


このリニューアル計画に大切なのは、ソフト面の同時改革。
「観光案内所の在り方」「サービス面の見直し」「醜い呼び込みの廃止」「イベントの復活・増加・告知」――などは大きな課題となっている。これらが改善されなければ「本物の旅人」は戻ってこない。
市や県は、集客の方向性を「数」が取れる団体客や外国人にばかり目が向けているが、「個人客」、それも若年層や子どもに楽しんでいただけることを恒久的に行っていかなければならない――。
派手すぎる醜い看板や、歩道に商品や幟旗などをたくさん出している店、観光客を追い掛けてまでの酷い呼び込み、これらを規制し、心あるおもてなし強化していくことが重要課題。道路だけが美しくなっても、人は増えないのだから・・・。

もう6~7年たってくるが、NHKの朝ドラでブームが巻き起こったころ、水木しげるロードには「金儲け」のために「外」から来た店が増えた。
「資本力を持つ店」が横行すると、もともとあった「地域の人が、旅人への愛情をもって営業していた店」が圧迫されてしまう。今まさに、その危機に瀕している。


ちなみに出雲大社や伊勢神宮の周辺も、3年半ほど前のご遷宮の前後に、外部からの店が一気に増えた。
出雲の神門通りは、派手な看板を掲げる店が並ぶようになり、呼び込みも増えた。
何でも「縁結び」に引っ掛けて通用するのは、ブームに乗っかっている間だけ。ブームが去り始めた今では、違和感が先に立つ。
出雲は観光案内所の応対や知識が優れているのが救いだが、そろそろ危機感が芽生えてくるだろう。


伊勢はある意味で、もっと酷い。外宮周辺・伊勢市駅周辺は地元の店が主流だが、内宮のおはらい町は、遷宮前後から空き店舗や軒先を借りた露天商が多発している。
また、おはらい町は「景観地区」に定められていて建物の外観には厳しい規制があるのだが、これが意外と曲者。規制されているのは「建物自体」や「建物についている看板類」のみで、町中をよく見ると、幟旗や立て看板が、せっかくの景観をぶち壊しにしている(あの「赤福」でさえ、幟旗がいっぱいだ)。
これでは景観保全も、単なるパフォーマンスでしかない。

3年半ほど前にファミリーマートがおはらい町にできた時、私は反対意見を述べた。観光地のどこにでもある店が「商売っ気」を強く出しているだけでも問題なのに、大手コンビニは町にそぐわない、と。
木の看板を掲げて景観を守ったが、案の定、店の前には「普通の幟旗」が掲げられた。
そのファミリーマートは結局、昨年秋に閉店。看板の写真を撮っていく人は多かっただろうが、日没を過ぎたら人通りが全くなくなる状態では、24時間営業の意味をなさなかった。オープンには「地域住民からの要望」もあったと聞くが、おはらい町通りの「中」ではなく、バスが通る幹線道路側につくるべきだったと思う。

そういう意味では、出雲も伊勢も、境港も同じ問題を抱えている。
それでも出雲や伊勢は、歴史と伝統のおかげで「放っておいても、ある程度の人が来る」。
境港は、そうはいかない。その違いに気づき、ソフト面を水木しげるロードの創世期に戻さなければ、せっかくの大リニューアルもすぐに飽きられてしまうだろう。
今が、正念場だ――。