「旅の宿家」鳥取境港❝縁❞ ブログ(^^♪

とにかく「旅」が好きな自由人。
「旅そのものと境港・水木しげるロードを楽しむ」に拘った「旅の宿家」(ゲストハウス様式)を、2016年8月26日にオープンしました。
https://guesthouse-en.jimdo.com/
女性客とファミリー主体の”遊び心”いっぱいの寛ぎの空間です!
米子や大山、松江、美保関、隠岐などへの起点としても生かせる「妖怪と魚の町」を楽しんでください!

「まち本来の魅力」を最も表現していた看板

先日、個人的に「境港・水木しげるロードで最も秀逸だと感じていた看板」が撤去されました。
境港駅構内の、線路の終端にあったもので「これより先 妖怪たちの霊力によって 思わず愉快になることがありますので ご注意ください。※お帰りの際「魂」の置き忘れにご注意ください。」と記されていました。
設置年はよく覚えていませんが2000年代前半ごろだと思います。


「こんなに楽しい! 妖怪の町」(水木しげる:監修、五十嵐佳子:著、実業之日本社:2006年4月刊)の冒頭は、JR境線の案内から始まります。


≪境港へは、米子から「鬼太郎列車」で行きたい。≫
≪妖怪列車は人間界と妖怪界の間に立ちはだかる結界をまたいで走る列車でもある。≫
≪改札に通じるドアの前には、「妖怪の町に、ようこそ」と書かれた門がある。その門をくぐるとき、思わず頭を低くする旅人が少なくない。鬼太郎列車で移動した40分のうちに、妖怪世界へ入るための心の準備がすっかり整い、まっさらな気持ちで「こんにちは。お邪魔します」と思えるからだろう。≫


自分が初めて境港を訪ねたのは、もちろんJR境線で、境港駅が近づき車窓から島根半島が見えてきた時の高揚感は忘れられません。
「水木しげるロード」という、独創的な「まちづくり」を楽しむには、やはり「鬼太郎列車」に乗って、プロローグの米子駅から徐々に気持ちを高めていくのがいい、と思っています。


2006年に、JR境線にある16の駅には「妖怪の愛称」が付けられ、境港駅は「鬼太郎駅」、米子駅は「ねずみ男駅」となりました。当時、米子駅には「ねずみ男売店」もありました。そのころに走っていた「3代目の鬼太郎列車(4種類あり)」は、個人的に最も気に入っているデザインです。
すべてにおいて、まちづくりの「原点」である“遊び心”が感じられ、すごく魅力的でした(写真は、下半分が帯状にデザインされているものが3代目=この3種のほか「寝済男列車」があり=で、最後の写真は2代目の鬼太郎列車です。これも好きなデザインでした)。


水木しげるロードの魅力は、やはり“遊び”にあると思っており(自分が惹かれたのはそうです)、鬼太郎列車とJR境線は、その「基点」として生きていました。当時は“妖怪たち”もボランティアが殆どで自由闊達な雰囲気が強かったですが、鬼太郎列車に乗り込んだり、駅で出迎えて人力車で走ったりと、「境港駅」および「列車の乗客」と結び付いた要素が、今よりも多かったです。


今、道路のリニューアルだけでなく、さまざまなものがアレンジされました。
全体的には美しく変貌し、歩きやすさや見逃さない工夫は成されていると思います。
ただ、自分としては、このまちのユーモアあふれる“少しふざけた”“型にはまらない”“縛られない”と言ってもいい“小ネタ”が大好きで、その要素が薄れているのは、少し虚しさを覚えます。


最も好きだった、この看板。
写真に残して、宿の壁面に貼っています。
20数年の歴史があるから、今がある――。その証として「古き良き時代」の魅力も知っていただければと願っています。

「水木しげる生誕祭」を終えて

9日に行われた「水木しげる生誕祭」は、大盛況となりました。
前日の8日が、故・水木しげる先生の生誕日。この日から来られているファンもおり、8日の宿泊の二人は昼過ぎにご到着して散策し、水木しげる記念館の無料開放などに行かれました。両日とも晴天に恵まれたことで一般の観光客も多くなり、「ゲゲゲ食堂」なども堪能していただけました。


祭典が米子開催になったため行くことはできず、夜も宿泊者などで食事会を行ったため、準備もあって見に行けなかったのですが、ご宿泊いただいた旅人さんをはじめ、毎年お会いするご家族、新たに繋がりができた人などが、たくさんの写真を載せているのを拝見し、楽しませていただきました。


また、9日夜は、初めて「宿が主催する食事会」を行いました。
宿泊者同士で行ったり、旅人さんと自分が一緒に食材を買いに行って作ったことは何度かありますが「会費制」で行ったのは初めてです(実施は宿泊者の目的が同じになる場合のみと考えています)。
パレード終了後に飲食店へ向かっても近隣の店は混雑しそうだったのと、宿泊者全員が「生誕祭の参加者」だったので事前に連絡したところ、全員が参加。宿泊者以外で繋がりがある人も来られたので、総勢10人(前半4人、後半6~7人と分かれました)で楽しんでいただきました。


生誕祭は仮装で参加された人が昨年以上に多く、クオリティも高くなりましたが、参加者から聞かれたこととしては、8日の「水木しげる記念館の無料開放」や9日の「缶バッジプレゼント」の告知が遅かったこと、そして「パレードは日中のほうが良かった」という声が挙がっていました。
うちもそうでしたが、参加者は1月末には行程を決めて休暇を決めるなどされており(宿泊の確保も同様)、「生誕祭の参加申し込み締め切りまでに告知されていれば、8日から来たのに」という声は結構ありましたし、缶バッジのプレゼントも「10日朝なら行けたのに」「生誕日に行うほうがいい」という意見も聞かれました。昼は米子、夜は境港と会場が分かれたので、このあたりは影響が出たようです。
また、仮装してパレードに参加された人は皆「寒さ」に堪えて戻って来られました。日中との温度差があるので、大変だったようです。


一般の観光客は大半が知らずに来られていたうえ、生誕祭参加者でも多くが記念館の無料開放を認識していなかったのは、せっかく全国各地から多くの人が集っただけにもったいなかったですし、パレードも、もっと一般の人に見てもらえる時間帯なら、と思います(あと、パレードは撮影禁止だったようで、食事会の時この議論が勃発していました)。
余談ですが、うちで食事会をしている際に出た話としては「仮装者はゼッケンを付けての撮影会にし、一般に人に投票してもらう写真コンテストを行えば面白い」といった話が上がりました。


あとは個人的なことですが、自分自身は声優さんやアニメ関連よりも、やはり「水木先生の生きざま」に関心があるので、今回で言えば活弁士の坂本頼光さんによる語りのような「深みのある話が聞けるほうが好み」です。「生誕祭」の主旨としても、また、まちづくりの「原点」を守り伝えるためにも、水木先生の生きざまなどについて語り合うような催しも望んでいます。


参加者組も多くは本日中に帰途に着かれ、昨日(11日)の夜は歩いている人も非常に少なかったです。春休みに入るまで暫くは観光客も少なくなりそうです。
現在とは違い、10年くらい前までは大規模な催しはなかったですが、細かいイベントは多くありました。今回もそれぞれ志向の違うファン層が来られましたが「年に1回、盛大にファンが集う」だけでなく、日常的に「町のファン」に繋げていく催しや取り組みで「町そのもの」を楽しむ人を増やしていければと思います。

「間違い予約」に謝りの電話

SNSで少し載せたのですが、あらためて先日(26日)の出来事をブログで掲載します。


先日、鳥取大学の入試が行われました。それに際し、1月末に「米子と境港の位置関係を理解せずに予約→詳細を送ってキャンセル」となった受験生がいました。
予約の際に「入試のため」と記されていたので、境港→米子が列車で45~50分かかることや、当宿は観光向けの要素が強いことなどを説明。
「場所を把握していませんでした」ということで、キャンセルになりました。


その対応で済んだことと思っていたところ――、26日の午後、試験が終わってから水木しげるロードの観光に来られ、わざわざ「間違えて予約したことへの謝りの連絡」を入れてくださったのです。


高校生で、こうした気配りができるのは立派で、「丁寧な応対」に感激しました。
「試験はあまりできなくて・・・」と弱気な声でしたが、真摯で真面目に生きているから、必ず良いことがあると思います。
無事、合格した際には、また会うことがあるかもしれませんので、楽しみです。


正直なところ、2月は昨年の6割程度の集客しかなく(昨年は悪天候による“飛び込み客”が続いた恩恵もありますが)、一人でも多く入ってほしいというのが本音です。この高校生の予約は「2泊」で、閑散期には非常に大きい存在ではありました。
それでも、宿の主旨として「試験終了後に観光するために泊まる」とかなら良いのですが、「受験生向け」とは言えないので、米子駅周辺でビジネスホテルなどをご利用いただいたほうが良いと判断しました。


うちは、利用者の平均年齢が一般的なゲストハウスなどと比べると高めだと思います。
予約の際のやり取りがやや難しくしており、宿泊予約サイトも「簡単に予約できる」という利点を生かしているわけではありません。「視覚」よりは「文章で伝えること」に重点を置いているので、携帯・スマホよりもPC予約向けなうえ、「見つけにくさ」もあると思います。
その影響からか、特に学生層が思ったより伸びないのですが、特に「旅を学ぶ」には尽力していますので、こうした真面目な学生さんにご利用いただけるようであればと願っています。


また「キャンセル」は、全体の予約数のうち約35%に上ります。ほか「プランに該当しないなどの誤予約」が5%ほどあります。おそらく一般的な宿よりも、かなり多いです。
宿泊サイトからの予約だと「必要事項の未記入」が結構いますし「無言キャンセル」も多く、予約に際し「詳細案内を送り、返信をいただいて正式に成立」という流れをつくっていますが、そこで30~40%はキャンセルが発生します(公式ホームページからの予約だと5%弱くらい)。
つまり宿泊サイトからの予約は「設備などの詳細を読んでいないケース」が多いと言えるのですが、開業当初、来られてから「思ったのと違う」という声が結構ありましたので、“入り口”の段階で明確に対応することを大切にしています(苦言の要因としては「子どもの受け入れ」「観光振興向けの取り組み」「バス・トイレ別」「テレビがない」――など)。
こうした対応により、予約直後のキャンセル自体は多いのですが、昨年は「不泊ゼロ」、「キャンセル料が発生する直前予約もゼロ」でした(台風による前日キャンセルは2件あり、キャンセル料は免除)。


キャンセルであっても、一言添えてくださると印象は向上します。泊まっていただかなくても信頼関係は残ります。
また「予約時の対応が丁寧な人」ほど、目的意識が高くマナーも良いのは明白ですので、応えるためにも「予約の段階から信頼関係を築き上げていくこと」に努めています。


自分自身も、文書対応はかなり丁寧に行っているのですが、口頭での伝達や説明は苦手で「何となく話したつもり」になってしまうこともあり、説明不足でご不便をおかけしたことや、ほかにも許可が曖昧なまま写真を使ってしまうなどで苦言を受けることもありましたので、より注意し、こういった真摯な姿を見習い、受け止めていかなければ、と自戒しています。


あらためて、この受験生に、敬意と感謝を表します。
ありがとうございました。

3月8日「水木しげる記念館」無料開放

3月8日は故・水木しげる先生の生誕日。
水木しげる記念館の開館日でもあり、今年も当日は「終日無料開放」となります。

翌日の生誕祭に来られる人もいらっしゃると思いますので、ぜひ“前入り”して、一人でも多くの観光客や旅人さんに恩恵があればと願います。
(なぜか記念館のホームページには、この無料開放が載っていません!)


なお余談ですが、一昨年までは年末の「大感謝祭」の日も無料開放でした。それがなくなったので、代わりに、命日である「11月30日」を無料開放してほしいと願っています。
水木先生が亡くなられた今、最も大切にすべき日は「11月30日」だと思っていますが、「命日に合わせて来られる人」は年々、減ってきていると感じますので、無料開放を“目玉”にした集客と、あらためて命日を知っていただけるようであればと思います。

「物語を伝えること」への想い

「旅宿」としての拘りの一つとして「案内の中に『物語を伝えること』」を大切にしています。


自分は物事において「理由」を理解し納得して初めて行動できるタイプで、感覚的に身に着けることが苦手です。子どものころから「理屈が分からないこと(興味が持てないこと)は、簡単なことでもできないタイプ」で、「とりあえずやってみる」には消極的でした。スポーツなども「ルールを覚えることから入るタイプ」。「頭で納得して、初めて体が動く」のです。逆に「理詰めで捉えていくので、駆け引きを重視するカードゲーム類は敵なし」でした。


こういった性質なので、データ分析が好きで「至上主義」とまでは言いませんが重視する傾向はあります。そして「原点」「経緯」「歴史」といった「理由に繋がること」を大切にしています。


「旅宿」として「それぞれの旅」に合わせた説明や案内するうえで「原点」「経緯」「歴史」などを絡めた「物語」は重要な要素だと思っています。
「まち」にも、店や催しなどにも必ず、今に至るまでの「物語」があります。自分は「旅」において「移動型」ではなく「拠点を絞って楽しむ」ほうなので、その「物語」を知り「そこに共感できるか」は「旅の醍醐味」になっています。それはまた「特に『目的地意識』が強い旅人」にとっては、本質的に楽しんでいただいて「また訪ねたい場所」になるものだと感じています。
さらに「エピソード」や「蘊蓄」を加えることで深みが増しますし、物語の幅が広くなるほど、どこか“ツボに嵌る”ものが生まれます。


それが「旅宿」としてのコミュニケーションだと思っていますし、実際「物語を知り、実感したくなって、予定時刻を延長して楽しんだり1泊追加する」などに繋がることもあります。
はっきり言って建物は古く不備もありますし、設備が整っているとも言えません。その分「旅」を楽しんでいただくための「情報力」、それも単なる知識的なものだけではなく「物語」として伝えることでカバーしているつもりです。
この分野においては、まちづくりや観光振興に関する著書を読み込んだうえで、実際に「日本各地、拠点を絞った旅を数多く重ねてきたこと」を生かして、実感を基に語れる自信はあります。


「旅」にまつわる「物語」は、一般的なホテルなどでは得られないもの。
なので「卒業論文の調査」「観光振興やまちづくりなどについて学んでいる人」に、もっとご利用いただければ、うれしく思います。「旅を学ぶ」に対して、全力で応えていけるよう努めていますし、自分も一緒に学んでいきたいです。


自分の“想い”や、表現する「物語」は実体験や感覚、相性が基になるので、多少は主観的な要素もあり、あくまでも「伝えるもの」でしかありません。「共感」は相手次第です。
宿運営の立場としては「ホームページはもちろん、予約販売の段階から明確に物語の要素を示している」ので篩の一つになっているとも言え、「物語を得たい」という感じの予約も入ってきます。ゲストハウス未経験者ほど「まちの観光」をベースに宿を探される傾向もありますから、その信頼に貢献していけるようには努めているつもりです。


水木しげるロードにおいては、自分にとって、やはり「20年前、観光客として初めて訪ねた時の“想い”」や、訪ねるにあたって「まちづくりの取り組み」に関する多くの著書を読み、共感し感じ取ったことが「原点」です。それが「今」に繋がって「物語」を築いているわけで、それぞれの時代の良さを「変化」として守り伝えることを大切にしています。


宿の外壁には「129枚の水木しげるロード周辺の風景写真」を貼っていますが、「概ね左半分は過去3年以内のもの、右半分は10~20年くらい前のもの」です。
河童の泉や妖怪神社などが「進化」していく様子、着ぐるみや鬼太郎列車の移り変わりや在り方の違い、あるいは本町にアーケードがあったこと――など「現存する物の以前との違い」「なくなってしまった店やオブジェ」を「記録」で「語り伝えていく」ことで、少しでも「知識」として感じてほしいという願いを込めています。
幸い、一般の観光客の人も、良く立ち止まって見ていただきます。貼付の意図と、変化や今はないものについて説明することもあります。


「昔は良かった」という懐古志向は好きではないですが「昔を知らないのに『今が最高』」と言ったり、「昔の良さを『なかったこと』にする」のは、もっと好みません。「リニューアル前の水木しげるロードの魅力」は、今も大切にしなければならないものだと思っています。
経緯や展開を知り、比較検証することが大切で「昔の良さ」を認識したうえで「今」に引き継ぐことが大事だと思い、“想い”を込めて「物語」を示しているものの一つです。


「物語」には、必ずドラマがあります。
すごく、ドラマチックな「物語」もあります。
それが共感し合えるような空間づくりを大切に「物語っていくこと」を、ずっと大切に生きていきます。“想い”を感じて来てくださった旅人さんの“心”に届けられるように――。