こんなに楽しい! 妖怪の町②
≪もしかしたら、なんでもない町のたたずまいに、あら、と拍子抜けする人もいるかもしれない。昭和30年代を思わせる、いかにもひなびた感じの商店街だ。同じようなお土産をどっさり並べた、どれがどれか区別がつかないほどよく似たお土産屋さんがざわざわと軒を連ねる町を思い描いていたなら、たぶん、ものたりなさを感じてしまうかもしれない。
でも、このなんでもなさが、徐々に効いてくる。
ふだん着の町だからこそ、じわじわとおもしろさがにじんでくる。
町の人々の日常に、妖怪のエッセンスが無理なく自然に溶け込んでいるからこそ、やがて人の世界に、妖怪の世界が淡く二重写しにみえてくる。そして、じんと、心にしみてくるのだ。
それが妖怪の町・境港と、これみよがしなつくり物の観光地との大きなちがいといっていい。≫
そう、水木しげるロードの魅力は、まさにこの言葉に凝縮されている!
私は「旅人」として全国各地を放浪してきた。特に「自然美しい景勝地」「古い町並みが整備・保存された町」「映画や小説の舞台となった町」――などを好んで。
境港・水木しげるロードは、これらの要素が融合されているだけでなく、そこに「楽しさ」「遊び心」が加わっている。まさに「最強」だった。
うるさい客引きなどもなかったし、どの店にふらっと入っても、気さくに、のんびり過ごすことができた。団体ツアーや外国人観光客はごく僅かで、これに「もの足りなさ」を感じるような人が来るような町ではなかったのも、居心地の良さを築き上げていたとも言える。
≪海から吹いてくる潮風に髪をゆらして、お日さまの光を浴びて、青い空を見上げて、しなければいけないことなど忘れて、ただのんびり、この町にいることを味わいたくなる。妖怪の町・境港は、穏やかな気持ちを優しく引き出してくれる町なのだ。≫
≪水木さんは「場所には感情がある」といっていたが、境港を訪ねたとき、水木さんが少年時代の思い出として語ったような世界が確かにこの町に存在したということを強く感じることができた。≫
自分は決して、水木先生の大ファンでも、妖怪に興味が深いわけでもない。「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメは子どものころに見ていたが、特別、大好きだったわけでもない。
漫画やアニメの文化には興味があるほうだが、好きな作品とかになると、もっと違ったものになる。
だからやっぱり、“はまった”理由は、この町そのものにある――。
水木先生の生み出した「作品」を、100%以上の魅力をもって引き出した町づくり。
それは、今でも、どこも絶対にまねはできない。
初めて訪れたとき、1~2時間くらいの散策を考えていた。
だが、全く時間が足りなかった。
取り立てて何がある、というわけではない。それでも時を忘れて『この町にいることを味わった』。
2度目の訪問は、それから僅か1カ月後のこと――。
それくらい、魅せられたのだ。
(③につづく)
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。