こんなに楽しい! 妖怪の町①
「こんなに楽しい! 妖怪の町」(水木しげる:監修、五十嵐佳子:著、実業之日本社:刊)
≪境港へは、米子から「鬼太郎列車」で行きたい。≫
2006年4月に発売された水木しげるロードの紹介本は、JR境線の案内から始まる――。
≪妖怪列車は人間界と妖怪界の間に立ちはだかる結界をまたいで走る列車でもある。≫
≪改札に通じるドアの前には、「妖怪の町に、ようこそ」と書かれた門がある。その門をくぐるとき、思わず頭を低くする旅人が少なくない。鬼太郎列車で移動した40分のうちに、妖怪世界へ入るための心の準備がすっかり整い、まっさらな気持ちで「こんにちは。お邪魔します」と思えるからだろう。≫
自分が初めて境港を訪ねたのも、JR境線に乗って、だった。
「水木しげるロード」というすてきな空間へ誘うには、やはり「鬼太郎列車」に乗って、プロローグの米子駅から徐々に気持ちを高めていくのがいい――。
この本は、境港・水木しげるロードの本来の魅力を、余すことなく伝えている。
1992年に、最初のブロンズ像が設置され、スタートを切った水木しげるロード。2003年には水木しげる記念館がオープンし、一つの完成形を迎えた。それからの2~3年、取材が行われてこの本が世に出た時期こそ、この町は最も魅力的だったと思う。
それから10年――。
何度か記してきたが、今、水木しげるロードの「大リニューアル計画」が持ち上がっている。7億5千万円を超える予算の下、道路を大改修し、ブロンズ像の配置換えや夜間照明の設置なども行われる。
その計画自体は、基本的には賛成だ。観光地としての成長を遂げた町として、楽しんでいただいて何度も足を運んでいただくためにも、ある程度は時代に即した「変化」が必要だと思う。
ただ、「何を」「どう変えるか」は重要な課題となる。
単に道路をきれいにして、仕掛けを増やしただけでは、一過性にしかならない。それではありきたりの、つまらない観光地と一線を画さない。
ここは、とにかく画期的な、オンリーワンの町づくりによって誕生した。それから10数年かけて、町のファン層を増やし、知名度を高めてきたことを忘れてはならない。
今こそ、水木しげるロードが誕生した本来のコンセプトに従い「原点回帰」しなければならないことが、たくさんある。それができるかが大切だ。
この本には、その“想い”が言葉として遺されている。忘れ去られてしまわないためにも、特に素晴らしい言葉を抜粋して記していこう。今日から3回に分けて、たっぷりと町の「原点」を伝えていく。
水木しげるロードの本来の魅力とは何か、今、あらためて見つめ直すために――。
(②につづく)
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